本展の醍醐味はルネサンスから現代までの美術の流れを概観できることです。
長きにわたるルーヴル美術館の歴史、栄華の象徴たるヴェルサイユ宮殿の様子、ルネサンスから現代までの絵画の記録、近代以降の芸術を網羅している銅版画=カルコグラフィー。
このルーヴル美術館カルコグラフィーコレクションは、ルーヴルが収集し蓄積してきた「知」と情報、また馴染み深い名画の数々を分かりやすく伝えてくれます。

ルーヴル宮殿

13世紀初め、城塞として歴史の幕を開けたルーヴルは、時代を経るごとに改築を重ね、城館、宮殿、そして美術館といった役割を担ってきました。その中で、治世下における重要な出来事の記録や貴重な美術作品などが収集され、現在では膨大なコレクションを所有する、世界随一の美術館となっています。この章では、このルーヴル美術館そのものに焦点を絞った作品をご紹介します。ルーヴル宮殿建設中の様子や宮殿の図面、柱など建築物の細部を示した図や、様々な場所から見たルーヴルの風景などを伝えるカルコグラフィーによって、ルーヴルの長く深い歴史を紐解きます。


《ルーヴル旧館正面の眺め》

ジャック・リゴー

画寸(mm)241×482

ヴェルサイユ宮殿

太陽王ルイ14世の栄華の象徴であり、ヨーロッパの黄金時代の頂点として、贅の限りを尽くしたヴェルサイユ宮殿。3万人以上の作業員を動員して着工したのが1661年、そして竣工が1710年という実に半世紀もの期間を費やした事業でもありました。何も無い不毛の土地に森を造り、セーヌ川の水を引き込むといった大工事が、フランス中から集められた一流の建築家や造園家、装飾家たちの手から生み出されたのです。この章では、バロック様式の宮殿、豪華な室内装飾、広大な庭園は、近世の各国宮殿の模範とされた輝かしいヴェルサイユにまつわる作品を紹介します。


《ヴェルサイユの大階段の内観》

ジョゼフ=マリー・シュヴォテ

画寸(mm)407×645

ルネサンス

世界にただひとつの存在である美術作品を後世に伝えるため、版画制作は複製に適した手段として奨励されました。そのためカルコグラフィー室では、作品を版画化して記録することを「国家事業」と考え、複製版画事業を行なってきました。この章では、イタリアで興った文化の革新運動、ルネサンス期の絵画について取り上げます。 中世の教会中心主義からの離脱を図り、古代ギリシア・ローマの復興を求めて、現世の肯定と人間性を尊重する風潮が生まれました。時代を代表するダ・ヴィンチやラファエロ、ボッティチェリなどの作品をご紹介します。

 


《モナ・リザ》

レオナルド・ダ・ヴィンチ
画寸(mm)335×248

 


《美しき女庭師》

ラファエロ・サンツィオ
画寸(mm)553×365

 

バロック

「黄金の世紀」と称される17世紀は、広くヨーロッパの各地で、レンブラントやフェルメール、ルーベンスやプッサンといった名だたる画家たちが活躍し、ヨーロッパ絵画の王道とも言える作品群が生み出されていました。その時期はまた、貧困や飢餓、大航海、科学革命や市民階級の台頭などの社会情勢を背景としており、そのような面も作品に強い影響を及ぼしています。

 


《レースを編む女》
ヨハネス・フェルメール
画寸(mm)350×291

 


《エレーヌと二人の子供》

ピーテル・パウル・ルーベンス 
画寸(mm)408×312

 

ロココ

荘重な前代のバロックとは対照的に、軽快で繊細優美、そして華麗な様式が花開いたのが、18世紀のロココでした。その傾向は建築や工芸など、多岐にわたって広まりましたが、中でも見事に結実した分野が絵画でした。曲線模様といった装飾を多用する技法を使い、宮廷風俗などが盛んに取り上げられました。ヴァトーやブーシェ、フラゴナールらによって描かれたロココの世界は、享楽や官能に満ち溢れています。

 


《水浴の女たち》

ジャン=オノレ・フラゴナール 
画寸(mm)385×455

 


《ピエロ(ジル)》

ジャン=アントワーヌ・ヴァトー 
画寸(mm)534×403

 

19世紀フランス絵画

産業革命とフランス革命を経て近代へ向かった19世紀、アカデミズムに対抗する新たな潮流が湧き起りました。それは新古典主義、ロマン主義に始まり、世紀半ばには写実主義へ、そして後期には印象派とポスト印象派、象徴主義や世紀末美術へと続いていきます。これら二つの流れは連動・反発し、影響を与え合ったことによって、19世紀の美術は形作られ、多種多様な様式を有する時代となったのです。ここではコローやドガ、モローなどを取り上げます。

 


《出現》

ギュスターヴ・モロー 
画寸(mm)482×335

 


《サビニの女たち》

ジャック=ルイ・ダヴィッド
画寸(mm)670×805

 

20世紀絵画

写真の登場により、版画芸術は過酷な産業競争に苦しむことになります。これを受け、19世紀末から カルコグラフィー室は原版収集の対象として、その時代ごとにもっとも卓越した芸術家へと目を向けることになるのです。 それは「版画=記録」という考えが「版画=芸術品」となった時期でもあり、長い間パリで制作活動をしていた藤田嗣治、長谷川潔の版画作品も、カルコグラフィー室にコレクションされているのです。 ここでは版画芸術を奨励し、伝統を受け継ぐためには同時に新しいもの、現在のものを創り出すことが必要だと考えたコレクションの中から、現代版画に焦点をあてます。

 


《イタリアの女(完全版)》

アメデオ・モディリアーニ 
画寸(mm)498×308

 


《踊り子たち》

マリー・ローランサン 
画寸(mm)340×430
※こちらはリトグラフになります。

 

ボタニカルアート

17世紀後半は、知的好奇心が最も高まった時代でもあります。ルイ14世によって1666年に設立された王立科学アカデミーは、数々の研究書を出版していました。植物学の研究としては『王の植物』と呼ばれる完成度の高い選集があり、319点もの図が収められています。また現代においてボタニカルアートとしてファンも多い植物画は、細部に渡る実物大模写により、正確な記録として残されました。カルコグラフィーは、美術や歴史上の知識の保存・伝播だけではなく、科学上の新しい知識を正確に伝える という役割をも担っていたのです。

 


《ナルシスシュス・シュルウェストリス、ムルティプレクス(ヒガンバナ科スイセン属》

二コラ・ロベール
画寸(mm)409×298

 


《スカモーニウム・シュリアクム(ヒルガオ科サンシキヒルガオ属》

二コラ・ロベール
画寸(mm)408×298